平沢進

救済の技法

救済の技法

 イタリアの超マイナーブラックメタルバンド「Arkham Asylum」のボーカルとコラボしたことで、メタル界にもその名を轟かせることなった平沢氏渾身の七作目です。音楽性はテクノポップというジャンルだそうですが、所々プログレっぽくなることもあったりアジア民謡っぽくなったりと、変化に富んでいて一度ハマったらなかなか抜けられない、独特の音楽世界です。
 全10曲約54分という構成で、彼の最大の持ち味であるシンセサイザーが全曲で炸裂しています。シンセサイザーの音に弱い私はイチコロでしたよ(汗)ところでテクノポップというジャンルは初めて聴きましたが、Deathstarsを普段から聴いてる私にとってはあまり違和感はありませんでした。むしろ好み(笑)簡単に説明するなら、機器によって加工された「ねじれた音」を曲の構成に使うというものです。これはある意味似たような音しか創れない、というように捉えられかねないため、好き嫌いがはっきり分かれるジャンルだと個人的には思います。
 それにしても今作はアジア民謡の影響が強いですね。ボーカルにそういった方を起用しているのでしょうか?女性のバックコーラスがなんとも神秘的なのですが。。。これは民謡が好みの方にはたまらない作品かも知れませんね。でも逆にそういうのが苦手な方には苦しいかも・・・。
 さてこの作品の醍醐味ですが、やはり何と言っても歌詞でしょう。
「川の向こうまで虚無の音が渡るよ」
五曲目「GHOST BRIDGE」最初のワンフレーズですが、ここだけとっても既に何重もの隠喩によって理解が難しいことが分かります。歌詞が書いてある曲は一応すべて読んでみましたが、それでもまだ分からないとこがあるという、とんでもなく深い作品です。しかしどの曲も歌詞の根底には「光」のようなものを感じました。一曲目が社会批判の曲であり、それ以降もどちらかというとネガティブな印象を強く受けるのですが、なぜか最後にはそこまで暗く感じないのです。これらはもしかしたら宗教的な意味合いを持つのかも知れませんね。まぁなんにせよ面白い歌詞であることは間違いないので、皆さんも自分なりの解釈をしてみてはいかがですか?
 ちなみにこのアルバムは気になる方だけ聴いてください。好き嫌いがはっきり分かれると思われますので。。。