Coldworld

Melancholie

Melancholie

 ドイツのアーティスト、Georg Borner氏による独りアンビエント/デプレッシヴ・ブラックメタル・プロジェクト「Coldworld」のファースト・フルレンス。全9曲約50分、Tr3,6,9はインスト。
 "人"の"夢"と書いて"儚い"。おぼろげで、掴みようのないぼんやりとしたそれは時として「志」、「希望」などと呼ばれ、得ようと願えば願うほどに、得られないと知った時の喪失感は大きくなる。本作を一度聴き終えたあとに残ったのは、まさにそのような儚さでした。
 曲の構成においてベースとなるのは分厚いシンセサイザー。輪郭の不鮮明な音には奥行があり、メロディが陰りを帯びるほどに深みを増していきます。特にTr1「Dream Of A Dead Sun」で聴くことのできるメロディは極限の緊張感を孕んでおり、聴く者にある種の強迫観念を与えているような印象を受けました。ちなみに1曲目以外の曲については暗さよりも耽美性に重点を置いて作られているようで、非常に繊細な音作りがされているようです。
 重厚なシンセサイザーによって固められたメロディラインに乗せられるギター、ベース、ドラム、ヴォーカルの演奏は普遍的なデプレッシヴ・ブラックメタルと違いありませんが、全体的にもやのようなノイズがかけられており、ジャケット通り灰色の世界が連想されます。トレモロ、ブラストビートを使用した疾走パートも少なくなく、一辺倒でない点も評価に値しますね。
 そしてこの作品の雰囲気にはどこかシューゲイザー系によくある浮遊感を感じることができます。メロディが耽美性を強調し、クリーンヴォーカルによるバックコーラスや鮮明なヴァイオリンなどを所々で使用しているためか、自然とそのようになったのかもしれません。メロディに関して例えるなら、どん底の絶望感というよりは虚脱感の方がしっくりきますね。
 以上、簡単に説明しましたが、本作は間違いなく名盤と言えるでしょう。バンド名、アルバム名からしてキテますが、内容はタイトル以上の出来栄えです。これを聴いていると50分があっという間ですよ。ちなみに本作のラストは「Escape」という約7分30秒のインストで、ノイズと憂鬱なシンセサイザーの音色で終焉を迎えます。前曲の「My Dead Bride」から想像すると、どうにも切なさが拭えませんね・・・。

↓1曲目「Dream Of A Dead Sun」寒い!寒いよお・・・!