Thergothon


「Stream From The Heavens」

 彼らはフィンランドのフューネラル・ドゥームバンドで、デモ一枚とアルバム一枚だけ作って解散したという伝説のバンドです。さらにこのバンドの曲はかつて世界最遅(?)と称賛され、「フューネラル・ドゥーム」というジャンルに多大な影響を与えました。
 今作はそんな彼らの最初で最後のアルバムで、フューネラル・ドゥームファンなら必聴の作品です。全6曲約41分、ひたすら暗く重くゆったりと進行していきますが、時折鳴らされる細いキーボードの旋律には音の広がりを垣間見ることができます。ボーカルは低音デスヴォイスとクリーンヴォイスの二人で、デスヴォイスの方はナチュラルに出るガテラルヴォイス、クリーンヴォイスの方は抑揚のないお経ヴォイス、と例えると少し解り易いかもしれません。メタル初心者の方には絶対に勧めたくない部類ですね。。。
 デモ音源の方のタイトルを見ると分かりやすいのですが、このバンドはクトゥルフ神話をモチーフにしているようです。バンド名が読めないのもそのせいでしょうか。分かる人には分かる本当にマニアックなバンドですね(汗)ちなみに私はクトゥルフ神話についてはあまり知りません。ウィキペディアでちょっと読んだ程度です。なので深いことは突っ込まないでください(汗)
 さて、このバンドの特徴はやっぱりこの独特の雰囲気だと思います。彼らがギターを極限まで歪ませてゲロゲロ歌っている間、周囲ではAmorphisが哀愁メロデスを奏でたり、Lost Horizonが高音メロスピを奏でたりしていました。そんな当時にThergothonの音楽性はあまり評価されるはずもなく、いつの間にか地下音楽とされていたのかも知れません。しかしそれが逆に功を奏し、彼らを孤高の存在へと押し上げたのだと私は考えています。簡単に言うと、誰も真似しないからその音楽性は彼らだけのものなのですよ。フューネラル・ドゥームというジャンルが活発になってきたのは彼らが出てもう少し経ってからのことで、そこでようやく評価され始めたのではないでしょうか。ごちゃごちゃと書きましたが、要はこのバンドの曲は他のものとは一線を画すということです。
 このアルバムはフューネラル・ドゥームファンなら聴いて損はないと思います。ただ、NorttやMournful Congregationといった「最近」のバンドとは少し異なるため、購入は試聴してから決めた方が無難かも知れません。